ロバのコラム

『ロバのティールーム 』 https://www.robanotearoom.com のコラムです。

「オネアミスの翼」批評1

オネアミスの翼 王立宇宙軍」の続きです。
YouTubeに映画の雰囲気がよくわかるいい映像があったので、リンクをのせておきます。
http://www.youtube.com/watch?v=szF2ILxONJw

以下、作品を批評してゆきましょう。----------------
あ、ネタバレなんで、これから見る人はちゅうい注意。

オネアミスの翼 王立宇宙軍」 批評

シロツグは空軍のパイロットになりたかったのだが、成績が足りなかったために仕方なく宇宙軍に入る。宇宙軍は軍とは名ばかりで誰も宇宙に行ったことがない。そんな宇宙軍で、シロツグは他の仲間たちと共に無為な生活を送っている。

 シロツグが週末の夜に繁華街を徘徊していると、ビラ配り(宗教のビラ、終末論)をしているリイクニ(若い女性)に出会う。翌日、シロツグはビラにあった住所を訪ね(おそらく下心半分で)、リイクニと昼食を共にする。
ここがまず「第1の転換点」
 シロツグがリイクニに宇宙軍の話をすると、リイクニは「宇宙に行くなんて素晴らしい」みたいなことを言う。
 いままで宇宙軍というと嘲笑されてばかりいたので、シロツグは真に受けて舞い上がる。

このころ、宇宙軍将軍は「有人衛星打ち上げ計画」を宇宙軍士官の前で公表する。ほとんどの士官はしらけた感じでこの話を聞くが、シロツグは何を思ったのか、その宇宙飛行士に志願する。
 こうして「有人衛星打ち上げ計画」はゆっくりと動き始める。
 準備は着々と進み、シロツグは訓練の合間にときどきリイクニに会いに行く。しかし、リイクニはガチガチの宗教の信者で、禁欲的な生活を送っているので、もともと世の中と適当に折り合いをつけて生きてきたシロツグとはなかなか意見が合わない。


ここで、リイクニの信じる宗教について。----------------
リイクニの信じる宗教はキリスト教を暗に指していて、原罪意識を持つ宗教で終末論的。作品中、彼女の信じる宗教の教典の内容が出てくる。その中で人類の歴史の始まりをこう説いている。
「神の使っていた火をあるとき、ある男(人、名前は忘れた)が盗んだ。盗んだ火に神は呪いをかけた。その火により、その男の息子が次々と死んだ。」
これは、キリスト教でいうエデン園のリンゴを盗んだアダムと同じ構成になっている。アダムは知恵の木の実を盗むことにより、知恵を付けたが、同時に死ももたらされた。
 つまり、人類は火「もしくは知」を持つことにより歴史を歩み始めたが、同時にそれは不幸な歴史の始まりであったと。これは、文明を持つことにより、人は不幸になったのだという原罪意識を持つ宗教特有の思考パターンである。
このような宗教を信じるリイクニは、当然アンチ文明となる。
また軍事産業の発達したこの世界では、科学技術イコール戦争という面もあり、戦争が嫌いなリイクニはもちろん反社会的である。
 なおリンクニが「宇宙旅行は素晴らしい」と言ったのは、単に戦争のない世界に行くということと、宇宙軍が戦争をしない軍隊だと認識したことによる。 -------------------


 リイクニの登場は、
・シロツグの宇宙への情熱に火をつけたことと、
・宇宙開発=科学技術の発達という進歩史観に対するアンティテーゼ、
という意味で重要となる。


続きは、また後で書きます。

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