2017/7/8放送の「ローカル路線バスの旅Z」を検証してみた(1)
ボクの大好きな番組、テレ東で不定期で放送されている、「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」。
これが最近、ルイルイ(太川陽介)と蛭子さんのコンビから、
田中要次(「あるよ!」おじさん)と羽田圭介(芥川賞作家ゴリ押しにお兄ちゃん)に代わって2回目の放送がこの前の土曜日(7月8日)にありました。
「ローカル路線バスの旅Z」
http://www.tv-tokyo.co.jp/rosenbus_z/
で、今回は、富士山麓の精進湖(山梨県)から栃木県の那須岳に行くルートだったんだけど、ネタバラしになるけど、たどり着けなかった訳です。
そうすっと、どこで失敗したのか、を検証したくなっちゃうわけですよ、はい。
実はボクは過去にも検証して、ブログを書いていたりします。
以下、ブログ
2014-01-07 テレ東「路線バスの旅(館山〜会津若松編)を検証してみた(1)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20140107
で、今回はそのルートのうち、埼玉県川越市から加須方面に向かって利根川を渡り、渡良瀬遊水池のほうに向かったのが間違いだったのではないかと、見ながらピンときたわけです。
ここは埼玉県東部を北上して群馬〜栃木と行くのではなく、
埼玉県東部へ向かい幸手あたりから五霞町を通って茨城県に入り、古河を通過し、4号沿いに北上すべきであったと…。
このボクの直感から出た仮説がホントに正しいかどうかを検証してみることにしました。
まず川越駅から…
TVを見てると、川越駅からは鴻巣、桶川、蓮田へのバス路線があり、彼らは蓮田行きを選択しています。蓮田に向かうと、その先は自ずと菖蒲町方面しか活路がありません。これがおそらく敗因です。
次に、鴻巣へ向かった場合、川越駅から鴻巣駅までは東武バス、鴻巣駅から加須駅までは朝日自動車ですが、
このルートですと蓮田ルートのような歩き区間は少なくなるでしょうが、結果的に渡良瀬遊水池方面になり、結論は同じでしょう(少し早く動ければたどり着けたかもしれませんが…)
川越→鴻巣 (東武バスウェスト)
http://www.tobu-bus.com/pc/search/rosenzu/kawagoe_sakado.pdf?20170522
鴻巣→加須 (朝日自動車)
http://www.asahibus.jp/html/rosenzu/kazo.pdf?20170106
そうすると、川越から桶川に出た場合も同じでしょう…
次に埼玉県から古河駅に向かう路線があるかどうかを検証します。
答えは下記の「朝日自動車」サイトありました。
http://www.asahibus.jp/html/rosenzu/sakai.pdf?20160706
ここによれば、春日部駅もしくは東武動物公園駅までたどり着ければ、古河駅にバスを乗り継いでいけます。
例えば、春日部駅東口から関宿中央バスターミナルに向かい、乗り換え、
関宿から境町へ向かい、乗り換え、
境町から古河駅へたどり着けるのです!
もっと言えば、川越から東武動物公園駅までたどり着けるルートを探せば、東武動物公園→境町→古河駅と乗り継げます。
では、川越駅から春日部駅、もしくは東武動物公園駅へ向かうには…
東武バスウエスト(上尾営業所)のサイトによれば、
http://www.tobu-bus.com/pc/search/rosenzu/ageo.pdf?201705
川越から大宮へは、平方で乗り換えればいけますね。
では、大宮から春日部へはどうかといえば…
東武バスウエスト(大宮営業所)のサイトによれば、
http://www.tobu-bus.com/pc/search/rosenzu/oomiya.pdf?201604
はい、つながった!
つうことで、少なくとも川越駅から古河駅まではバス路線がつながりますね!
まあ時刻の問題はありますが、川越→上尾→蓮田→菖蒲方面よりもずっと勝率が高かったのではないでしょうか?
さて、さらに検証をつづけます。
つづく
青いサワガニ (3.検証編-4)
前回のつづきです。
青いサワガニ (3.検証編-3)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150818
前回は下記の2本の英語論文(東北大と首都大学東京)について検証しました。
<論文1>
Minoru Ikeda, Toshiya Suzuki and Yoshihisa Fujio
「Genetic Differentiation among Populations of Japanese Freshwater Crab, Geotheiphusa dehaani White), with Reference to the Body Color Variation」
(Benthos Research Vol. 53, No. 1 : 47-52 (1998))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/benthos1996/53/1/53_1_47/_pdf
<論文2>
Tadashi Aotsuka1,*, Tadashi Suzuki1, Tetsuhiro Moriya1, and Akemi Inaba2
「Genetic Differentiation in Japanese Freshwater Crab, Geothelphusa dehaani (White): Isozyme Variation among Natural Populations in Kanagawa Prefecture and Tokyo」
(Zoological Science 12(4):427-434. 1995 )
http://www.bioone.org/doi/pdf/10.2108/zsj.12.427
これらの2つの論文の結論は、
「赤と茶は遺伝子的に近いけど、赤・茶と青は遺伝子的に結構遠くて、サワガニの別種にしちゃってもいいレベルかもよ」
って感じでした。
つまり、「赤・茶」と「青」には遺伝子的に種として有意差があるということでした。
しかも個体の分布が赤、茶、青でそれぞれかたまって分布しているようでした。
なるほどなぁ〜、やっぱりそうだったのかぁ、進化の過程で赤・茶・青と分岐したのねぇ・・・
って思っていたのもつかの間、国会図書館に依頼してた鹿児島大学の方の博士論文が手元に届いて、この納得がくつがえることに・・・
<国会図書館から届いた博士論文の一部>
岡野智和「本邦産サワガニ類の分類と生態に関する研究」2001、博士論文
http://ci.nii.ac.jp/naid/500000205750
ウェブ上で文献検索で見つかったんですが、内容のPDFはなかったので、国会図書館の複写申し込みをしたんです。
博士論文の単行本でしたので、著作権法の問題で50%以上コピーできませんので、事前に目次を見て、必要な箇所だけ複写依頼しました。
この論文は2001年3月に大学に提出されていますので、先の英語論文より数年後になります。
この博士論文によれば、まず鹿児島付近のサワガニはトカラ列島以北にしか生息しておらず、それ以南は別種のサワガニになるとのこと。実は本州・四国・九州にはサワガニは一種類しかいないのですが、鹿児島より南の島嶼部には多くの種のサワガニがいるのです。おそらくもともとは1種だったんでしょうが、島に分かれて孤立してからそれぞれ独自の進化をしたようなのです。
で、鹿児島県とトカラ列島以北のサワガニはどうかといえば、体色で分けると赤と青の二色が分布しています。体色以外の甲羅の幅、脚、爪の大きさなどではもっと様々な特徴があるようですが(個々の形について分類がこの論文には記載されてる)、このへんは割愛します(話が複雑になっちゃうからね)。
で、赤と青のサワガニの分布は以下の通り
<鹿児島県内にサワガニの体色別分布>
※ピンク蛍光ペン・・・体色赤/青の蛍光ペン・・・体色青/茶色の蛍光ペン・・・体色茶 で分類
そして甑島(こしきじま)と大隅半島の上祓川では赤と青の個体が混在して居るという、今までの研究結果とはどうもことが書いてありました。いままで読んだ論文では体色赤と体色青とは地理的に離れているケースばかりでしたので・・・
そして各採集地点のサワガニの体色は以下の表のようです。
上の表で、上の四角で囲んだひとつ(採集地点11)は大隅半島の上祓川、四角で囲んで下三つは甑島のものです。
著者はこれらのサワガニの遺伝子解析を行って求められた結果から個々の集団間の遺伝距離(D値)を求めてデンドログラム(系統図)を作成しています。
要は遺伝子的に如何に似てるか、この集団が以前属していた集団がどこでどこから分岐したかを遺伝的に解析するものです。
結果は以下の図・・・
<近接結合法により作成したサワガニ地方集団間のデンドログラム>
※図中の蛍光ペンピンクは体色赤、蛍光ペン青は体色青を示す。
上記のデンドログラムによれば、
・屋久島のサワガニ(青)・・・A群
・九州南部・長島・種子島のサワガニ(青と赤)・・・B群(黄色い蛍光ペンで囲んだ範囲)
・甑島のサワガニ(青)・・・C群(黄色い蛍光ペンで囲んだ範囲)
・甑島のサワガニ(赤)・・・D群(ピンクの蛍光ペンで囲んだ範囲)
・宇治島・黒島・口永良部島のサワガニ(青と赤)・・・E群
となります。
ここで目をひく点は、
・B群(九州南部・長島・種子島)では、「1Rの個体種より下はほぼ体色が青」、「4Rより下は全て体色が赤」です。
・B群の1R(甲突川・赤)よりの下のA群(屋久島)とC群(甑島・青)の体色は全て青
・D群(甑島・赤)はC群(甑島・青)とだいぶ離れていて、D群(甑島・赤)はB群よりも上からの派生である。
という点です。
ここで、甑島の同じ場所で採れた青のサワガニ(C群)と赤のサワガニ(D群)は遺伝的にはだいぶはなれた亜種であることがわかります(たまたま同じ場所に生息していただけ、たぶんこの場所にやってきた時期が違う)。
逆に大隅半島の上祓川のサワガニ(B群の11R(赤)と11B(青))は非常に近接しています。つまり体色が違う以外は遺伝子的にほとんど差異がないということです。
さらにB群の1R(甲突川・赤)と4R(新川・赤)のところで、「1Rより下は青系統」「4Rより下は赤系統」と大きな意味では差異がありそうですが、とはいえ赤系統の4Rの下に11B(上祓川・青)が出てきたり、また、1Rより下の青系統で21R(小浜川・赤〜中間型)22R(汐見川・赤〜中間型)23R(唐隈川・赤〜中間型)などの赤系が出現しています。
このように見ていくと、赤い色素を作れない(アスタキサンチン生成欠損)ってのは「遺伝的に失うとその子孫は絶対に赤い色素を作れない」というタイプの遺伝的要素ではないのではないかともとれます。
この辺はまだまだ研究が足りていないようですね。
なお、論文中では上祓川の赤と青のサワガニについてと、甑島の赤と青のサワガニについてはこのように記載しています。
「上祓川の集団の赤色型(11R)と青色型(11B)のD値は0.006と非常に小さい値であり、両体色間に遺伝的差はほとんどなかった。」
(ピンク蛍光ペン部の記載)
「甑島赤色型と甑島青色型はそれぞれ別の系統に分類され、体色により異なる遺伝的特性を示したが、他地域では体色による遺伝的な差異は認められなかった。」
(ピンク蛍光ペン部の記載)
さらに本論文の著者は考察の中で以下に述べています。
「サワガニの遺伝的な分化については、菅原・蒲生(1984)、Nakajima and Masuda(1985)、Aotsuka et al.(1995)、Ikeda et al.(1998)の報告があり、体色変異は遺伝的な分化を表す形質であることが示唆されてきた。しかし、本研究では少なくとも九州本土では体色変異と遺伝的な分化とは必ずしも一致せず、形態的にもほとんど差が認められなかった。他方、地理的に隔離された島嶼集団には、遺伝的な分化が認められ、形態的にも相違があった。」
(ピンク蛍光ペン部の記載)
「甑島の青色型と赤色型は本土系統と島嶼系統にそれぞれ分類され、同一地域に生息しているにも関わらず遺伝的に大きく離れており、形態的にも生殖器官である雄の第1腹肢が明らかに異なった。また、遺伝子頻度においても置換が起きている遺伝子座が確認され、両体色型には生殖隔離が成立していることが示唆された。この甑島青色型は、新しい時期(40-2万年前)に形成された陸橋を伝って本土から侵入してきた集団と推察された。」
(緑蛍光ペン部の記載)
とありました。本土部の赤と青の体色の差は遺伝的にあまり大差がなく、甑島のほうはたまたま青い集団が後から入ってきてそれが先にいた赤い集団と生殖ができない(ハイブリッドが生まれない)ために両集団ともに混血が生まれなかったということですな。
ますます、体色と遺伝子的な差異がようわからなくなってきました。
こりゃ、体色の要素ってのはあまり大きな遺伝子的差異で変わるわけではなく、赤い色素を作れるか否かの要素ってのはわりと簡単でどっちかにぶれるってことですな。
こりゃ、もうサワガニだけじゃなくて、甲殻類全体の発色の原因について勉強しないとどうも全体が見えてこないようです。
サワガニに限らなければいろんな色のカニ・エビがいますからねぇ・・・
これらについて、もうちょっと勉強してから、もう一度サワガニにもどってくるしかないかな・・・
ということで、市立図書館でカニ・エビに関する本を何冊か借りてきました。
とりあえずこれらに目を通して見よう・・・
「カニ・エビの本の写真(あとで貼る)」
<図書館で借りたカニ・エビの本>
ということでまだまだサワガニの体色の探索は続けますが、一応、ブログはここで一旦切ります。
長い間、ご静聴ありがとうございました。
お後がよろしいようで(笑)
青いサワガニ (3.検証編-3)
前回のつづきです。
青いサワガニ (3.検証編-2)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150804
2週間ほどあいてしまいました(盆休みが入ったからねぇw)
さて、青いサワガニの検証のつづきをします。
前回のブログでは下記の文献を検証しました。
鈴木廣志, 津田英治「鹿児島県におけるサワガニの体色変異とその分布」
(日本ベントス学会誌 Vol. 1991 (1991) No. 41 P 37-46)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/benthos1990/1991/41/1991_41_37/_pdf
この文献では、
青いザリガニはβカロチンから赤の発色の要因であるアスタキサンチンを作り出す合成経路(代謝経路)をもっていない(もしくは、もっているが、弱い)と推測される、というのが結論でした。
さて、それでは、このアスタキサンチンを作れないサワガニ(青いサワガニ)がアスタキサンチンを作れるサワガニ(赤いサワガニ)とどのくらい遺伝子的に離れているのか?という問題です。つまりは、別種、もしくは亜種に近いぐらいの遺伝子的な差異があるかどうかとういうことです。
それについては2本のいい論文がありました(英語論文です)。
Minoru Ikeda, Toshiya Suzuki and Yoshihisa Fujio
「Genetic Differentiation among Populations of Japanese Freshwater Crab, Geotheiphusa dehaani White), with Reference to the Body Color Variation」
(Benthos Research Vol. 53, No. 1 : 47-52 (1998))
https://www.jstage.jst.go.jp/article/benthos1996/53/1/53_1_47/_pdf
この論文は1998年の論文で上記のアスタキサンチンの論文の7年後に東北大の研究者によって発表されたものです。
この論文は、文字通りサワガニの体色の違い(青・茶・赤)と遺伝子的相違について検証されています。
まず検体のサワガニは全国から5箇所選ばれたようです(下記地図参照)。
※マーカーの色は体色を示しています。
赤色・・・マーカーのピンク
茶色・・・マーカーのオレンジ
青色・・・マーカーの青
そしてこれらについて遺伝子解析(電気泳動)をして、その遺伝子の差異を表にまとめています。
この表については、一番上の欄は上記と同じように体色で色分けしました。
赤色・・・マーカーのピンク
茶色・・・マーカーのオレンジ
青色・・・マーカーの青
つまり、表の左の3つは体色が赤(RE Type)、真ん中の1つは体色が茶(DA Type)、右側の1つは体色が青(BL Type)を示しています。
そして遺伝子解析結果についての部分(表の4行目より下)は、数字が大きいものをピンク、中間のものをオレンジ、小さいものを緑に色分けしました。
その結果、ざっと眺めてもわかるとおり、「赤(RE Type)と茶(DA Type)」と「体色が青(BL Type)」の間に明確な差があることがわかります。つまりこの論文によれば「赤・茶」と「青」との間で遺伝子的な差異が顕著に見られると言っています。
そしてこの論文ではDISCUSSIONの項で以下のように述べています。
ピンクの四角でかこってあるとこ、重要ですよ。
特にその中の青のアンダーラインと、ピンクのアンダーライン!
すなわち、
「赤(RE Type)と茶(DA Type)の間では " the range of local race "、すなわち local race(地理的変異?)レベルの差異しかない」
そして、
「体色が青(BL Type)と他の2つ(赤・茶)の間には " the range of subspecies or congeneric species ".、すなわち congeneric species(亜種?)の差異がある」
と言っているのです。
つまり、
「赤と茶は遺伝子的に近いけど、赤・茶と青は遺伝子的に結構遠くて、サワガニの別種にしちゃってもいいレベルかもよ」
的な言い回しです。
なるほどぉ〜、やっぱり青と赤・茶では遺伝子的にかなり違うのかぁ・・・
そして、同じ頃に出された論文(こちらも英文)にも同じような結論が出されています。
Tadashi Aotsuka1,*, Tadashi Suzuki1, Tetsuhiro Moriya1, and Akemi Inaba2
「Genetic Differentiation in Japanese Freshwater Crab, Geothelphusa dehaani (White): Isozyme Variation among Natural Populations in Kanagawa Prefecture and Tokyo」
(Zoological Science 12(4):427-434. 1995 )
http://www.bioone.org/doi/pdf/10.2108/zsj.12.427
こちらは首都大学東京の研究者のもので、1995年投稿ですね。
こちらは青の個体と茶色の個体を比較していて、やはり遺伝子的に差異があるといっています。
この表についても、一番上の欄は上記と同じように体色で色分けしました。
茶色・・・マーカーのオレンジ(一番上はちょっと間違えて青塗っちゃったけどオレンジです)
青色・・・マーカーの青
つまり、表の左の8つは体色が茶(DA Type)、右側の10こは体色が青(BL Type)を示しています。
そして遺伝子解析結果についての部分(表の4行目より下)は、数字が大きいものをピンク、中間のものをオレンジ、小さいものを緑に色分けしました。
青と茶で有意差があるように見えますねぇ
ふむふむ、なるほど、なるほど・・・
ところで、これらの論文を読み終わった頃、国会図書館に複写依頼していた2001年の鹿児島大の方の博士論文が届きました。
じゃじゃ〜ん!!!
<国会図書館から届いた博士論文の一部>
さて、この博士論文をパラパラと見ていると・・・
うん????? え〜〜!、マジ!?
さっきの英字論文と違うことが書いてある・・・
ええ〜〜〜〜!
まあ確かに博士論文の言うことも一理ある・・・
さあて、つづきは次回のブログで・・・
つづく
青いサワガニ (3.検証編-4)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150820
青いサワガニ (3.検証編-2)
前回の続きです。
青いサワガニ (2.検証編-1)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150803
前回紹介した論文(一寸木氏の2論文)はサワガニの体色別の分布図で、その体色の要因については記載されていませんでした。
次に紹介する論文では、この青茶赤の体色の要因についての記述があるものです。
鈴木廣志, 津田英治「鹿児島県におけるサワガニの体色変異とその分布」
(日本ベントス学会誌 Vol. 1991 (1991) No. 41 P 37-46)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/benthos1990/1991/41/1991_41_37/_pdf
この論文によると、鹿児島県内では青いサワガニ、茶色いサワガニ、赤いサワガニの3種類が生息していて、その生息分布にやはり偏りがあるらしい。そして、この3種の体色のサワガニの分布の要因をつきとめようとしている。
研究者らは、サワガニの体色の赤色の要因であるカロテノイド色素の含有量を各体色ごとに調べている。
論文中の表にわかりやすいようにマーカーで色をつけてみました↓
一番左側は体色別に、
青いサワガニ・・・青のマーカーペン
茶色サワガニ・・・橙のマーカーペン
赤いサワガニ・・・ピンクのマーカーペン で色分けしてます。
そして表の右側の数値の羅列は、左から
「アスタキサンチン」「アスタキサンチン・モノエルテル」「アスタキサンチン・ジエルテル」「βカロチン」の順にならんでいて、
含量が少ないものを緑、多いものをピンクのマーカーペンで印をつけました。
そうすると、あ〜ら不思議、傾向が見えてきますねぇ。
これによれば、カロテノイド色素のうち、
青型には、βカロチンが多いが、赤の発色の要因であるアスタキサンチンが少なく、
赤型には、βカロチンが少ないが、赤の発色の要因であるアスタキサンチンが多く、
茶型は両者の中間の組成となっていることがわかりますねぇ。
青いサワガニは赤い発色の原因であるアスタキサンチンが少ないわけです。
つまり赤の発色がなくて、赤色を抜いた地の色がそのまま見えているのが青いサワガニなわけです。
さらに面白いことがあります。
青いサワガニにはアスタキサンチンは赤いサワガニより少ないが、βカロチンの含有量は赤いサワガニより多い。
これは何を意味しているのでしょうか?
論文によれば、アスタキサンチンはβカロチンよりつくられるそうです。
つまり、青いザリガニはアスタキサンチンの原料であるβカロチンをたくさんもっているにも係わらず、アスタキサンチンが少ない。
すなわち、
<ここ大事ですよ、テストに出しますよ!>
青いザリガニはβカロチンからアスタキサンチンを作り出す合成経路(代謝経路)をもっていない(もしくは、もっているが、弱い)ということです。
もっていない(弱い)理由はといえば・・・
もうおわかりですね、
そう合成経路(代謝経路)をつかさどる酵素かなんかをもっていない、
酵素をもたないということは酵素をつくる遺伝コード(DNA)が欠損している、
と推測できるわけですよw
もしくはβカロチンからアスタキサンチンを作り出す経路を阻害するなにかかあるのかもしれません。
この原因もおそらく遺伝コードに起因していると思います。
この論文ではここまでは結論づけていませんが、ここまでヒントがあれば、21世紀に生きる生物学をちょっとかじった人ならピーンときますね。
この論文自体は1991年の論文で、分子生物学全盛よりちょっと前なのでこの時代の技術的限界です。
これ以降の論文にはどの遺伝子が起因するかを突き止めているかもしれません。
さらにサワガニの論文探しの旅はつづきます。
つづく
青いサワガニ (3.検証編-3)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150818
青いサワガニ (2.検証編-1)
前回の続きです
青いサワガニ(1.出逢い編)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150731
房総半島で青いサワガニと出会ってしまったわたくし・・・
また房総のおじさんがサワガニ(シミズガニ)といえば「青いカニ」と思っていた事実・・・
こりゃ、サワガニには地理的特異性があるのではないかと、ピ〜ンと来たわけです。
さっそく家に帰っていろいろとググっていくわけですが(便利な時代になりました)、まずヒットしたのが前回のブログでも書いたこのページ
↓
白くて青いサワガニ・BL型
http://bunbuku2.web.fc2.com/s-sawagani2.html
このページによれば
「青いサワガニであるが、千葉県南部(房総半島)の他、神奈川県南部、静岡県東南部、熊本県西部などに生息している。それぞれの地域で遺伝的には異なるという。」
とあり、どうも地域によってサワガニの体色が異なるような書き方です。
また、困ったときのとりあえずのウィキペディアの「サワガニ」のページを見てみると、
サワガニ(wiki)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%AC%E3%83%8B
特徴の項に
「体色は甲が黒褐色・脚が朱色のものが多いが、青白いもの(地方によっては「シミズガニ」と呼ばれる)、紫がかったものなども見られ、よく見られる体色は地域個体群によって異なる。」ある。
つまり青白いヤツを特にシミズガニというみたいです。これでサワガニとシミズガニは同じ種を指していることはわかりました。
また、体色の項に
「体色変異は照度、餌、底質の色などの生息環境の要因左右されるとされているが十分に解明されていない。」とあり
体色の違いは地質的要因に起因するという研究もあるらしい。
さらに、
「14mmまではほぼ茶色型で、二次性徴が発現する時期の甲幅が14mm以上になると青色型もしくは赤色型の体色を呈する」とあり、
今日取った4個体のうち小さい2個体は茶色、大きい2個体は青色であるので、これも一応セオリー通り。
しかしまあ、一次ソースがウィキペディアではこころもとない(たまに嘘書いてあることもあるし・・・)
しかもこの記述からは、その地域によるサワガニの体色の違いが、地理的変異性なのか、亜種に近いのか、がどうもはっきりしません。
これは学術論文から当たっていくしかないと思い、いろいろとネット検索をしてみました。
最近は、いろんな学術雑誌の論文がネット上にPDFで転がっている時代なので、結構なレベルの情報を手に入れることができます。
昔なら図書館を探し回って(大学図書館とか国会図書館とか)、複写して手に入れていたのに・・・
ホントに便利な時代ですw
で、まず引っかかったのが以下の論文
一寸木肇「サワガニGeothelphusa dehaani(WHITE)の体色変化とその分布について(予報)」
(甲殻類の研究 (7), 177-182a, 1976-02 日本甲殻類学会)
http://ci.nii.ac.jp/els/110002698452.pdf?id=ART0002976374&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1438574560&cp=
※右のPDFをクリックしてみてください。論文が全文読めます。
この論文は1976年の論文とだいぶ古いですが、体色の違うサワガニについての本格的な論文としてはたぶん本邦で最初の論文かと思います。
この論文ではサワガニの体色を大きく青、赤、茶の3つにわけて(そのサブカテゴリーでさらに分類してるが、ここでは一応3種とする)、それぞれ青:BL型、赤:RE型、茶:DA型としています。
そして神奈川県を中心として関東甲信地方のサワガニの体色の違いによる分布を図示しています。
その図は以下の通り、
わかりやすいように
甲羅が青(BL/水色の蛍光ペン)、赤(RE/ピンクの蛍光ペン)、茶(DA/橙の蛍光ペン)に色分けしてみました。
関東甲信地方のサワガニの体色違いによる分布
※一寸木肇「サワガニGeothelphusa dehaani(WHITE)の体色変化とその分布について(予報)」より
この分布図を眺めて見ると、なんとなく区分があるように見えますねぇ。
南関東は青、北関東は茶、静岡は赤みたいな感じがします。
さらに同じ方が続報で、東北地方における体色ごとのサワガニの分布が報告されています。
一寸木肇「本州北部におけるサワガニGeothelphusa dehaani(WHITE)の体色変異について」
(甲殻類の研究 (10), 57-60, 1980-11 日本甲殻類学会)
http://ci.nii.ac.jp/els/110002698249.pdf?id=ART0002976048&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1438577471&cp=
※右のPDFをクリックしてみてください。論文が全文読めます。
東北地方のサワガニの体色違いによる分布
※一寸木肇「本州北部におけるサワガニGeothelphusa dehaani(WHITE)の体色変異について」より
この文献によれば、東北地方はどうも茶色いサワガニしかいないようですねぇ
そして、一寸木肇氏のこの2つの論文によれば、この体色の違いは環境要因ではないか、との推測をしている。
うう〜ん、これだけ見事に分布が分かれると、環境要因というのは疑わしいなぁ、やっぱり遺伝子的に違うんじゃないのかなぁ?って考えるのは2015年にいる僕らだから思うことで、この論文が書かれたのは1976年、すなわち昭和50年代前半、いまから40年前です。
今みたいにDNAシークエンスとかの技術が発達している時代よりずっとまえ、いまでは当たり前のDNA配列から進化の系統を追っていく分子系統学なんて言葉がまだ無かった時代ですからねぇ・・・
分子系統学
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%86%E5%AD%90%E7%B3%BB%E7%B5%B1%E5%AD%A6
分布もさることながら、僕はやはりこの体色の違いの要因が知りたいわけで、これでは全然もの足りません。
ということで、この論文以降の論文を探すことにしました。
つづく
青いサワガニ (3.検証編-2)
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150804
青いサワガニ(1.出逢い編)
いやぁ〜、久しぶりにブログ書きますねぇ
ホント、1年ぶりのようですw
最近はTwitterばかりにうつつを抜かしているので、ホントブログはご無沙汰です。
ちなみにTwitterアカウントはこれ↓
https://twitter.com/robanotearoom
さて、今回のテーマはズバリ、「青いサワガニ」です。
青いサワガニを見たことある人、手を挙げて!?
ううん、こんな広いホールでも手が挙がってるの2〜3名ですねぇ…
なんのこっちゃ…
まあ冗談はマイケル、もとい、さておき…
なんでこんなタイトルでブログを書くことになったのか、そのいきさつから…
実はいま近所の子供たちの間でサワガニを飼うのが流行っていてお向かいさんからサワガニを何匹か頂いたんだけど、
もう少し数が欲しいね、ということで(娘たちのたっての希望)、家族でサワガニを捕りに山のほう、具体的には埼玉県寄居町に行ったんです。
それが7月の初め頃…
<埼玉県寄居町のサワガニ捕獲現場>
ここでは7匹ほど「普通」のサワガニを捕ったかな…
ブログに載っているせいか、クルマ横付け産地のせいか、乱獲のため、個体数が少なくて2時間ほどやってこの成果…。
あと個体の大きさがちょっと小さい…、ちょっと不満が残りましたが、この日はこれで退散(帰りがけに長瀞の自然の博物館にはしっかり寄ったけどね。
ここで捕った「普通」のサワガニってのはこういうやつ
↓
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%AF%E3%82%AC%E3%83%8B#/media/File:Geothelphusa_dehaani_01.jpg
そう、僕らのいう「普通」のサワガニってのは、赤もしくは茶系の色をしているわけよね。
このとき捕獲したサワガニは今日現在も元気に玄関の水槽の中で暮らしています(1匹は死んだかな?)
さて、先日、房総半島の南の突端の方に家族4人で海水浴に行ってきたんです。
朝6時頃に出発して、現地には9時半ごろには到着したんで、1時頃まで海水浴を楽しみました。
<房総(館山市内)での海水浴の一コマ(自撮りですw)>
で、折角、田舎に来たので、帰りがてらにサワガニを捕まえて帰ろうか、なんて話になりました。
さて、房総はボクの第2の故郷とも言うべき場所で足繁く通っているので、観光いちご園を経営している懇意のおじちゃん、おばちゃん(もうおじいちゃん、おばあちゃんという歳ですが)がいます。
昔(たぶん2003年頃)にこの観光いちご園についてボクがホームページで紹介したことがあります。
そのときのページはこれ ↓
http://www.k5.dion.ne.jp/~himar/tateyama/ricchan.html
りっちゃん農園っていいます。
最近のりっちゃん農園はこんな感じ↓
<りっちゃん農園のハウス内で苺をほおばる娘たち(2015/3/22撮影)>
<りっちゃん農園の大きな苺、「章姫(あきひめ」と「とちおとめ」(2015/3/22撮影)>
話がだいぶそれました。もとにもどします。
イチゴ狩りのシーズン以外でもたまに立ち寄りお茶のみ話をする仲なのですが、海水浴の帰りにそのいちご園に立ち寄って挨拶でもしていくことにしました。おばさんは出かけてていなかったのですが、運良くおじさんと娘さんには会うことができて…
で、おじさんとのお茶のみ話の最中に、おじさんに「このあたりでサワガニ捕れないか」を聞いてみました。
そうすると「さわがに?????」っていう反応が…
え?おじさん、サワガニ知らないの!?
いろいろ話しているウチにどうもおじさんの言う「シミズガニ」がサワガニのことらしいことがわかりました。
さらに奇妙なことに、サワガニを説明するときに「沢にいる赤とか茶の小さいカニ」というボクの説明にもおじさんの「????」が…
これも話をしていくうちに、どうもこのへんの「シミズガニは青い」らしいというのがわかって…
こりゃどうしたもんか…
おじさんのいうシミズガニとサワガニは同一なのか?
はたまた別のカニか?
別種の青いカニが川にいるのか!?
まあとにかく沢に行って捕まえてみよう、ということでおじさんに別れをつげ、三芳村(現・南房総市)から帰りがてらに山道を走り、適当な川でサワガニを捕まえることにしました。
房総の山中を北上しますが、なかなかサワガニがいそうな川(沢)がない…
平久里川水系を外れ白石峠を越えてたところで、ようやく丁度いい感じの川を見つけたので河床に下りてみました。
看板より、川の名は平塚川というようです。
河床に下りて、石をひっくり返してカニを探します。
カワニナやホタルの幼虫、オタマジャクシはたくさんいるのですが、なかなかカニがみつからない…
しかし、かたっぱしから石をひっくり返しているうちにようやく甲幅1cm程度の茶色いサワガニ2匹を見つけました
もう少しほしいなぁ…
目の前に一抱えぐらいの大きな石(岩というべきか)があったので、ごろん、とひっくり返してみると…
いたいた!デカイのが2匹…
しかも2匹とも青っちろい…
こんな色のカニは見たことないが、フォルムはサワガニっぽい…
とりあえず、茶色い小さなカニ2匹と青白い大きなかに2匹を捕獲し、帰路につきました。
で、房総南部で捕ってきた青白いシミズガニがこれ…
で、家に帰ってとりあえずググって見ると、どうもシミズガニはサワガニの別称だというのがわかった。
また青いサワガニでググると有力情報が…
↓
白くて青いサワガニ・BL型
http://bunbuku2.web.fc2.com/s-sawagani2.html
このページには房総半島のサワガニは青白いと書かれています。
どおりで房総のおじさんは赤いサワカニを見たことがないはずです。
ずっとあそこに住んでいれば青白いほうが「普通」のサワガニです。
なるほど、所変われば品変わるとはよくいったもんだ
はて、こうなると、ではなんで房総半島のサワガニは青白いのか?
地理的変異か、生息環境が原因か、はたまた亜種か…
先天的要因(遺伝子が原因)か、それとも後天的要因か?
もう気になって気になって仕方がありません。
このサワガニの青白さの原因を知りたくて、いつもの癖、そう、ボクの飽くなき探求への旅路が始まりました。
つづく
青いサワガニ (2.検証編-1)へ
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20150803
浦和散歩<2> 続・鎌倉時代の墓石を探して・・・
前回のつづきです。
「浦和散歩<1> 鎌倉時代の墓石を探して・・・」
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20140820
墓地での探索を切り上げ、隣接する医王寺の境内のほうに行ってみました
墓地と境内の境にある薬師堂の隣には背の高い五輪塔(?)が・・・
<薬師堂横の五輪塔(?)>
漢文でいろいろ書いてありましたが、年号は結局わかりませんでした。
そして鐘楼門まで歩いてくると、その横に石仏を集めた箇所がありました。
<鐘楼門横の石仏群>
この石仏にも年号が刻まれておりましたが、年代は遡っても江戸初期まで(正徳とか元禄とか弘化とかありました)ですので、状況は墓地と同じですねぇ・・・
ううむ、まあ江戸期以前のものが残るにはなかなか条件が良くないとねぇ
先ほどからホラ貝の音が聞こえたり、銅鑼の音や読経の音が・・・
そう、ちょうどお盆の法要をしてるんですねぇ
本堂には喪服姿の檀家さんがいらっしゃいました。
<本堂前の卒塔婆群>
そしてお墓に立てるための卒塔婆が本堂前にずらりと並んでいました。
その卒塔婆の後ろに隠れるように案内板が・・・
そして案内板の横に結晶片岩(たぶん緑泥石片岩)でできた石版が・・・
ん?史跡の臭いがするぞ
案内板を見ると・・・
ん?なになに?どうも石で出来た卒塔婆(ストゥーパ)らしい
え?年号が1309年?鎌倉時代やん!
石塔婆の下部には漢文でいわれが書かれています。
一応、鎌倉時代の石版は見つけたわけだが(笑)、墓石を調べた中学時代にはおそらくここまできてないので(それ以前に年号が違うし)、これをもって鎌倉時代の墓石があったとはいえませんね。まあこれも墓石じゃなくて石塔婆だしw
ネタばらしですが、この石塔婆のことについては以下のサイトに載っていました(調査後にググった)
医王寺に関するサイト
http://keny72.blog.fc2.com/blog-entry-373.html
http://www.ukima.info/feature/enma/iouji.htm
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今回の調査、結論から言えば、
「中学時代に作成した調査資料に記載されていた鎌倉時代の墓石は、今回の調査では発見できなかった」
ということになります。
では、30年前にホントに「あったのか」「なかったのか」は推測するしかありません。
だって記録はこれだけなんだもん↓
<中学時代の記録(再掲)>
鎌倉時代の石塔婆があるぐらい古い寺なので、可能性はゼロではないということです。
記載された年号も「永仁六年」、永仁年間は7年間あるので、一応矛盾もありません。
だからホントに鎌倉時代のものだった可能性は捨てきれない。
では見間違った可能性は?
見間違ったことを前提に検討してみましょう。
読み間違えたとしたら、どう間違えるだろうか?
ここに日本の年号がすぐにわかるページがあるので、これを見ながら推理しよう
http://www.benricho.org/nenrei/sei-gen.all.html
まず、1500年以降で「永」で始まる年号は、
永正(1504〜1521、18年間)
永禄(1558〜1570、13年間)
の2つのみ、江戸期にはない。
この両方の場合は、それぞれ6年以上あるので矛盾もない。
ただ「仁」の字と「正」「禄」を間違えるか、といえば、「正」なら間違えるかもしれない。
そうするとこの腺からいえば、「永正」を見間違った可能性もある。
この場合、やはり相当古い墓石だということになる(だって室町時代だもん)
次に、頭の字が書けていて二文字目の「永」から読んで、「二」を「仁」と読んでしまった場合。
これは例えば「※永二年」ってのがあって※部分が欠けていた場合を指します
二文字目が「永」で始まる年号は江戸期には結構あって、
寛永(1624〜1644、21年間)
宝永(1704〜1711、8年間)
安永(1772〜1781、10年間)
嘉永(1848〜1854、7年間)
の4つがあります。
この線ならば無理はありませんが、急に夢のない話になっちゃいますねぇ。これぐらいの時期の墓石なんて山ほどありますし、ウチの実家の墓石にもこれぐらい古いヤツはあります。
でも果たして「二年」の二を「仁」と間違えることがあるのか、それに「永仁六年」の「六年」をどう解釈するのかという問題があります。
仮に「永仁6年」が「※永26年」だったとしても「※永二十六年」という表記になり「十」がどこに消えたのかという話になりますし、
それ以前に26年間も続いた年号が明治以前にはひとつもないので・・・
、え、いや、あったひとつだけあった
応永(1394〜1428、35年間)
しかも「永」がついてる・・・
でも室町時代前期なので、これの読み間違いだとしてもすごいことになりますねw
でもまあ、読み間違いの線はかなり薄いなぁ・・・
と、検証はしてみるものの、現物が見つからないので、なんとも言えません。
証拠はあのボール紙のメモ1枚だけですから・・・
墓石の形も現在のような方形だったのか、五輪塔だったのかも記載がない
五輪塔なら「永仁」でもおかしくないし、現にこの墓地には五輪塔もありました。
さて、調査に行っても謎は解決せず、まだまだ調査が必要なようです。
とりあえず墓石の変遷の歴史をちょっと勉強して、墓石の形状と時代についての基礎知識を付けてから現地で再調査をすることにしましょう。
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墓石調査の話はこれで終わりですが、このあと浦和駅まで散歩しましたので、それもついでに書いてしまおう。それは次回のブログで・・・
つづき