ロバのコラム

『ロバのティールーム 』 https://www.robanotearoom.com のコラムです。

オネアミス-分析編1

オネアミス批評(分析)
だいぶ時間があいてしまいましたが…

 前回までに結局あらすじを全部書いてしまった、あはは。
見てない人に説明するには、結局こういう風になってしまうよね、しゃ〜ないね。
ここからはこの作品の分析に入ります。

この映画のテーマは「文明発達の歴史」。
 「人」は知恵を持ち、火を使い、道具を作り、最終的に宇宙に飛び立つまでの歴史、これが主題です。知恵を持った「人」は様々なものを発明し、海を渡り、空を飛び、そしてとうとう宇宙に到達する。いろいろなものを発明し、自分自身の環境を住みやすい環境にしてゆき、便利になり・・・。しかしその一方で、戦争や、貧困などの社会問題、といった負の問題も生み出していった。「知」を得た「人」の光と影の歴史。
「知」を持ったことが果たして良かったことなのか?
「知」の獲得の「正」の象徴としての宇宙開発、「負」の象徴としての原罪意識を持つリンクニの宗教。これはこの映画の世界だけでなく、ぼくらの住むこの世界における「科学技術」VS「キリスト教」の構図を暗に指し示している。
リンクニの宗教は端的にキリスト教そのものを指していますね。キリスト教ではアダムが蛇にそそのかされて知恵の実であるリンゴを取ったことが「人」の苦難の歴史の始まりとしているが、リンクニの宗教では神の使っていた「火」をある「人」が盗むところから歴史が始まっている。人が知恵を得たことが悪ととらえられている。これを「原罪」というけれども、そういう意味でリンクニの宗教も「原罪」意識を持つ宗教である。
 「知」を獲得したことによって、様々なものを得ることができるようになった、これがすなわち「知」に対する肯定的なとらえ方、いわゆる進歩史観ね。一方で、「知」を獲得したことでいろんな問題が発生した、すなわち「知」に対する否定的なとらえ方、パンドラの箱を開けてしまったという感じ。
 人間の歴史は常にこの二項対立のなかで作られてきた。
 この作品では、主人公のシロツグの視点からこの二項対立を問うている。シロツグはこの2つの間で揺れ、最終的には宇宙空間へと飛び立つ。しかし、衛星軌道上にのったシロツグから発せられた言葉は、神への感謝。
エンディング間近のこの部分で、シロツグは、
「知恵を持ち、様々なものを開発し、様々な問題を引き起こしながらも、人間はこの未知なる空間まで到達してしまった。このバチあたりな人間をどうかお許しください、」と。
そして、
「この人間の飽くなき欲望と未知への希望の先にどうか絶望を与えないでください」と。
 あのいい加減に生きていたシロツグが、最後のシーンではこんなに信心深くなってしまったんですねぇ。といっても、原罪意識のなかで生きるリンクニと違って、「知」を肯定的にとらえているという意味でまだ救いがありますが・・・。

ここまでこの映画の主題について書きました。
まだ続くかも。
次はこの作品の雰囲気について書こうかな。

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