ロバのコラム

『ロバのティールーム 』 https://www.robanotearoom.com のコラムです。

mixiコミュのミニ採集会@南房総 <弐> 鴨川松島海岸の成果

mixiコミュのミニ採集会@南房総<壱>鴨川松島海岸
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20100318
のつづきです。

鴨川松島海岸の採集品をアップしませう。
まずは松島海岸の転石から…
その前に…

<斑糲岩ペグマタイト>
斑糲岩(はんれいがん)は火成岩(深成岩)の一種で、マグマがゆっくりと冷えて固まった岩石です。そのマグマが固まる速度が遅ければ遅いほど結晶成長の時間が確保できるわけで、遅く固まるとそれだけ斑糲岩を構成する鉱物(角閃石、輝石、斜長石など)は大きな結晶になります。
その結晶が大きくなった岩石(岩体)をペグマタイトといいます。今回は斑糲岩を構成する鉱物が大きい(巨晶)なため、斑糲岩ペグマタイト(巨晶斑糲岩)というわけです。
mixiコミュのミニ採集会@南房総<序>」
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20100316
↑でも、ちょっと触れていますが、この斑糲岩ってのは火成岩の分類ではマフィック岩と呼ばれる分類に入ります。
マフィック岩とは、マグネシウムや鉄などの成分を多く含有するマグマからできた岩石のことを指し、このマフィックなマグマからは色の付いた有色鉱物ができることが知られています。この代表が、角閃石や輝石などです。
一方、マフィックの相対するのは「フェルシック」で、こちらはケイ素分が多く無色鉱物を多く含む岩石ができます。その代表例は、花崗岩とか閃緑岩などで、こちらが巨晶化すると、花崗岩ペグマタイト、閃緑岩ペグマタイトになります。フェルシック岩を構成する主な鉱物は、石英、アルカリ長石、白雲母など白や透明の鉱物です。
ちなみにマフィックなマグマが、急激に固まると(火山噴火など)玄武岩になります。つまり、この産地の岩石は、マフィックなマグマがゆっくり冷えて出来た斑糲岩と、マフィックなマグマが急に固まってできた玄武岩からなり、もともとの起源が同じ可能性が高いと言うことです。
なお、後から嶺岡林道の項で出てくる橄欖岩も有色鉱物を含むフェルシックなマグマ由来です。ただ、斑糲岩や玄武岩とは時代が異なります(後述しますが、これは斑糲岩や玄武岩が橄欖岩(後に蛇紋岩に変化)に捕獲された捕獲岩だからです)。

前置きが長くなりました。
では斑糲岩に含まれる鉱物から紹介しませう。


1.苦土普通角閃石 Ca2[Mg4(Al,Fe3+)]Si7AlO22(OH)2

斑糲岩ペグマタイト中の黒いところがこれ。
暗灰緑色柱状もしくは板状結晶。
斑糲岩の大部分を占めていて、ほとんど主成分になっているぐらい大きな結晶です。ここの結晶はおっきいですねぇ〜。


2.透輝石(異剥輝石)? CaMgSi2O6



上の写真の○の部分。下の写真は○の部分を拡大したもの。
透輝石(異剥輝石)、かな?ひょっとすると頑火輝石か?ちょっと自信ありません。
ここの透輝石(異剥輝石)は、『松原聡著「鉱物観察ガイド」(東海大学出版会)』によると、
「斑糲岩ペグマタイトの成分をなす。淡黄灰色、粒状、ある方向に沿って割れやすい性質が見られるものもある。いわゆる異剥輝石である」とあります。
輝石独特のロット状(繊維状)の劈開(割れ方)なので、透輝石(異剥輝石)かなと思ったがたが、なんか頑火輝石にも見えるんだよなぁ(同行のTheoph氏は頑火輝石を採集して同定してます)。
ちなみに黒いところは前述の「苦土普通角閃石」です。



↑むしろこっちが輝石かな?
ちょっと観察不足&勉強不足。
顔洗って、出直します。


3.ソーダ沸石 Na2[Al2Si3O10]・2H2O (斑糲岩上)


斑糲岩上のソーダ沸石の顕微鏡写真です。
左端にあるにスケールがあります。ひと目盛り1mmです。
斑糲岩上の沸石は当初想定していませんでした。確かに文献にはあったが、沸石は玄武岩溶岩のほうがメインだと思っていたので、ノーマーク。気がつかないで、タワシでゴシゴシ洗ってしまったが、外れずに残っていました。よかったよかった!

ちなみにこの写真を撮ったときに使ったマイクロスコープ(顕微鏡)はこれ↓


Dino-Lite plus
http://www.thanko.jp/product/microscope/dinolite/dinolite-plus.html

このマイクロスコープが優れもんなんだよねぇ〜
今回の仲間Thoph氏が最初に購入したんだが、あまりの性能の良さにぼくも真似して3ヶ月ほど前に購入しました。
USBでパソコンに繋げて、そのまま画像を取り込めて、しかも画像上で寸法や角度まで測れる!
その前に買ったビクセンのやつはホントどうしようもない代物で、ホント金返せって感じでしたが、これは買って大成功。

ビクセンのどうしようもない製品はこれ↓
シーモスコープPCV
http://www.vixen.co.jp/micro/standard.htm#cmos


4.セラドン石 K(Mg,Fe)2(Fe,Al)Si4O10(OH)2


緑のところ全部がこれです。
雲母の一種みたいですな。今回の採集会まで知らんかった石です。同行のMottyさんに教えていただきました。前にここに来たときは、自然銅が酸化して孔雀石になったものだと思っていました。やっぱよく知っている仲間と行くと、いろいろ勉強になります。
組成式を見ると、鉄・マグネシウムリッチで水酸基があるから、やっぱりマフィックマグマ由来で、水がたくさんあるとこ、海底でできたんでしょうな。


5.玄武岩質溶岩(ガラス質)


これは鉱物ではないですが、ガラス質の玄武岩質溶岩を砂浜で拾いました。


5.ソーダ沸石 Na2[Al2Si3O10]・2H2O (玄武岩質溶岩上)

↑この石の左下辺りをマイクロスコープで見たのがこれ↓

マッチの軸を立てたような針の山を見ると圧巻ですぜ!
これはこの産地の目玉の鉱物でしょうな。沸石の中でもナトリウムを多く含む鉱物です。


6.ソーダ沸石と方解石?


↑この石の右下辺りをマイクロスコープで見たのがこれ↓


ソーダ沸石の横にピンク色透明の方解石様の鉱物がついています。
鉄イオン化なんかで着色された方解石かな・・・?
現在検証中。

とりあえず松島海岸の成果はこんなとこかな



つづく

mixiコミュのミニ採集会@南房総 <参> 嶺岡林道編
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20100329

                                                • -

ロバのティールーム
http://www.k5.dion.ne.jp/~himar/