ロバのコラム

『ロバのティールーム 』 https://www.robanotearoom.com のコラムです。

中津鉱床の採集品

今回は、前回のブログ

http://d.hatena.ne.jp/damascus/20091007

で書いた秩父鉱山の中津鉱床で採集した石にについて書きます。
この中津鉱床ってのは、ホントに鉄ばっかりのところです。他の金属の気配がまったくない。
様々な金属が出てくるお隣の大黒鉱床とは大違い。大黒とは1キロぐらいしか離れていないのでに…。
磁鉄鉱と黄鉄鉱のオンパレードです。それと他には、これらが雨水などで酸化した褐鉄鉱(針鉄鉱)ぐらいでしょうか…
石灰岩と閃緑岩が接触した際に生じたスカルン鉱物である方解石とザクロ石は大量にあります。いわゆる脈石ね。
あと、微細ながらベスブ石があるらしいが、これは確認できませんでした。

1.黄鉄鉱 pyrite FeS2


これは、下のズリ桃の窪で採集したものです。桃の窪にはこういった黄鉄鉱が落ちています。ただ水が集まるところなので、みんな酸化して褐鉄鉱化しています。そんな中から一つ拾ってきました。一応あるよ、って感じです。
ただ、ここの鉱床はこの黄鉄鉱よりも磁鉄鉱 Fe2+Fe3+2O4 のほうが圧倒的に多い。そういう意味ではここでは珍しい部類なのかも知れません。つまりは生成時は酸化状態がデフォルトだったということかな?

2.磁鉄鉱 magnetite Fe2+Fe3+2O4

磁石にひっつくので、磁鉄鉱と判断しました。前述の通り、この鉱床の主要鉱石です。というかほとんどこれかもしれません。空隙の少ない塊状のものがゴロゴロ落ちています。選鉱場跡と思われるコンクリート構造物のところにもたくさんありました。時折、細かいですが結晶が見られます。特に脈石の方解石上には自形結晶が見られます。写真は塊状のものですが、細かい結晶が見られます。
このほかにのぺ〜っとした質感のものがあり、こちらは磁赤鉄鉱かと思われます。

2.灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし)? andradite Ca3Fe3+2(SiO4)3

秩父鉱山のようなスカルン鉱床でよくでるザクロ石(ガーネット)です。
方解石上ですので、ひょっとすると灰礬柘榴石(かいばんざくろいし) grossular Ca3Al2(SiO4)3 かもしれません。
両者の違いは、化学式でも見ての通り、鉄 Fe とアルミニウム Al の違いだけです。しかもこの産地では両方が報告されており、しかも非常に似ているためにX線か何かで分析しないとわからんです。ただ両者は、灰鉄柘榴石から灰礬柘榴石まで鉄からアルミへ濃度が連続的に変わってゆく固溶体であるため、両者の中間の組成のものがかなりあると思います。というか、中間体がほとんどかもしれんが…。
脈石であるため脈状のものはたくさんありますが、結晶がよくわかるものは少ないかな…。

2.灰鉄柘榴石(かいてつざくろいし) andradite Ca3Fe3+2(SiO4)3

これは磁鉄鉱中の空隙にできたザクロ石(ガーネット)です。磁「鉄」鉱上ですので、まあ間違いなく灰「鉄」柘榴石でしょう。こういう産状を見るのは初めてですねぇ。ここの石榴石は大抵は結晶質石灰岩(方解石)上にあるものだと思っていましたから・・・。

拡大してみるとこんな感じ。

あと、細かい結晶がついているヤツがいくつかあるんですが、それはただいま同定中です。
とりあえずこんなとこかな・・・

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