ロバのコラム

『ロバのティールーム 』 https://www.robanotearoom.com のコラムです。

「千葉石」ついに新鉱物に登録!

いやぁ〜、やられました。
「千葉石」が新鉱物に登録された件がマスコミに発表されました。


県内初の新鉱物「千葉石」
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/chiba/news/20110215-OYT8T01106.htm


新鉱物は「千葉石」…内部にメタンなど含有
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110216-OYT1T00184.htm


新鉱物「千葉石」発見=結晶構造中に天然ガス成分−都府県名は6番目・物材機構など
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&rel=j7&k=2011021600030&m=rss


発見に「驚き」「貴重」 「千葉石」新鉱物に特定
http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/20110216/CK2011021602000059.html


結晶に天然ガス含む新鉱物発見 「千葉石」と命名
http://www.47news.jp/CN/201102/CN2011021501000642.html


などなど他多数!
昨日まで、「千葉石」で検索してもほとんどヒットしなかったんだが、今朝になって検索すると、マスコミのページのオンパレード・・・


さらに、千葉県立中央博物館では企画展を実施(今日かららしい)。


新鉱物発見! 名前は「千葉石」!
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/exhibitions/topics_ex/2010chibaite/index.htm


千葉県立中央博物館ホームページ
http://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/



・・・、なんでこんなに大騒ぎしてるかって???
実はここ数ヶ月、千葉石の探索に没頭していたからです・・・
しかし、未だに満足な結晶を獲得するに至らず・・・
新聞発表されたからには、もう探索はダメですな・・・
はぁ〜(ため息)



千葉県ってのは全体的にわりと地層が新しくて、鉱物マニアの間では「石なし県」と揶揄されるんだが、そんな中でも房総半島の南部の一地域だけわりと古い地質の部分があるんです。
それはいわゆる「嶺岡帯」と呼ばれる付加体とその周辺であって、この辺りだけ地学年代でいうと古第3紀から新第3紀というだいたい5000万年ぐらい前の地質になっています。


「付加体」というのはプレートテクトニクスの用語で、要は遠くでできた地層がマントルによるベルトコンベアで運ばれてきて、日本の近くの海溝で沈み込む際にプレートがガリガリ削られて、その時の屑(ぼくの高校時代の友人の地震学者?(地学で博士号もってる)が「かんなクズ」と例えている)がくっついてできた塊みたいなもんです。


これについては、以前、ブログで説明しました。


mixiコミュのミニ採集会@南房総<序>
http://d.hatena.ne.jp/damascus/20100316


あと、このページが詳しい・・・


付加帯について詳しいサイト
http://www.osk.janis.or.jp/~mtl-muse/subindex03-04jurassiccomplex.htm


↓ここには嶺岡帯ついても記載があります。
http://www.geocities.jp/horiuchihiroe/tishitu/tishitu3/kenkyu/fukatai.html
http://www.f2.dion.ne.jp/~nhirano/mineoka.html



その嶺岡帯よりちょっと新しい保田層群という地質区分のところで、「千葉石」と仮に呼ばれていた石が数年前に見つかったのです。その千葉石というんのは、石英(水晶)の結晶格子中にメタンをはじめとする有機化合物(アルカンCnH2n+2)が包含されたような鉱物で、この入り込んだ有機化合物の影響で結晶格子がゆがんで、特有の結晶構造をしめすというもの。2007年ぐらいに学会発表されて、そのあと国際鉱物学連合に新鉱物(世界で初めて発見された新しい種の鉱物)として申請されていました。


この千葉石は、去年の頭ぐらいから鉱物ショーとかに出てきていたので、頭の片隅にはあったんですが、去年末頃から本格的に探索しはじめました。
産地についてはだいたいの場所はわかっていたのですが、特定には至らず、伝聞情報や文献、地質図やらグーグルアースやらを駆使して調査し、当たりをつけてから、去年12月19日に予備調査をしました。


そして、ようやく産地を突き止めました。


12月26日の本格的な装備で産地である採石場跡に赴きました。
しかし、一番最初に発見された露頭の位置まではわからずじまい。
採石場の中をうろうろしてようやく白い脈を見つけて採集ましたが、採集した石はすべて方解石だったという失態をしました。
そんな中、1月に行われた鉱物同志会会合の際に、たまたま以前採集された方とお話しする機会があり、だいたいの露頭の位置を知ることができました。


リベンジということで、先々週の日曜日(2月6日)に、仲間を伴って産地である某採石場跡にて採集を実施、露頭を発見したんですが、結晶を採集するまでには至らず・・・。
まあたぶん「千葉石」であろう石英脈は採集しているんですが、肉眼で結晶が確認できなければ片手オチです・・・


そんな状況の中、なななな、なんとこの千葉石が新聞発表されてしまった・・・
こりゃもう、採集どころの騒ぎじゃなくなりますな。


きっと、そのうち採集家がどっと押し寄せるでしょう・・・
そしてそのうち千葉県が天然記念物指定をして、露頭が採集禁止になり、露頭前に天然記念物の看板が立ちます。
そしてそれが地元の観光資源になる・・・


これがこのあと想像されるストーリーです。
あと一歩遅かったな・・・


<追記>************


アメリカの科学雑誌「NATURE」に掲載されたらしい↓
http://www.nature.com/ncomms/journal/v2/n2/abs/ncomms1196.html


発見者(研究者)のひとり門馬綱一さん↓
http://www.gcoe.es.tohoku.ac.jp/report/2008/sdc/sdc02.pdf


門馬綱一さんのホームページ↓
http://www.geocities.jp/kmo_mma/


国際鉱物学連合(IMA)↓
http://www.ima-mineralogy.org/


「鉱物コレクション入門」の著者伊藤剛さんはこんなことを予測w↓
http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20100325/1269527071

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